下肢静脈瘤

 講師:山田育男( 平成12年2月22日講演)


下肢の静脈瘤は古くからよく知られた病気ですが,その割にあまり理解されていない病気といっていいでしょう。私なりに静脈瘤をわかりやすく定義してみると,“静脈がふくれて浮き出ている状態”といっていいかと思います。

静脈瘤の症状の中で最も多いのは足がだるい,重い,痛いというもので,夕方になると症状が強くなるというのが特徴です。疲れ,ほてり,むくみ,かゆみもあります。かゆみは静脈瘤による湿疹のためで,この湿疹は静脈瘤を治療しないと治りません。血管の痛み,こむらがえり,潰瘍,色素沈着,出血などもおこり,女性には美容上の問題も大きいと思います。

静脈瘤という病気を理解していただくためには,低いところにある足の血液がどのようにして高い心臓へ戻るかを理解することが必要です。足の筋肉の中にあるたくさんの静脈の中の血液が筋肉の収縮とともに押し出されます。これを筋肉ポンプと呼びます。静脈の中にある一方通行の弁のおかげで,血液は上方向にだけ流されます。したがって,歩行運動をすれば足の血液はどんどん心臓へ戻っていきます。

静脈瘤では,何らかの原因で静脈の弁が壊れ,血液がうまく心臓に戻らず,からまわりして,足に溜まってふくれた状態になります。原因のはっきりしない一次性静脈瘤と,静脈血栓症(血液が固まり静脈がつまった病気)のために弁が壊れた二次性静脈瘤があります。ほとんどが一次性のものですので,以下,断りのない限り一次性の静脈瘤についてのお話です。

静脈瘤の治療には1.弾力ストキングをはいて弁の壊れた静脈を圧迫し,血液の逆流を防止する方法,2.壊れた静脈に薬を注射して静脈の壁をくっつけてしまう硬化療法,3.弁の壊れた静脈を手術でとってしまう方法がありますが,一長一短があり,静脈瘤の程度と患者さんのご希望により決定されます。

静脈瘤の危険因子は女性,妊娠,出産,立ち仕事,静脈瘤の家族歴,高齢といったものがあります。すでに静脈瘤のある方あるいは危険因子の高い方は予防をかねて日常生活では以下のことに注意してください。立ち仕事では短時間でも足を上げて休息をとる。立っているときはなるべく足を動かす。寝るときは足を高くして寝る。すでに静脈瘤のある人は立っているときは可能な限り弾力ストッキングをはく。ということが大切です。