秋の実のり

撮影:神谷 研 会員

この写真は、京都市の奥の美山町という小さな町で写したものである。こんな柿を撮るのに、なぜこんな遠方でと思われるであろうが、実は京都の美山町には茅葺きの家が立ち並んで、日本の原風景に見られると言ふ話を患者さんから聞いて、次の日曜日には早速出かけた。三年前の秋のことである。
 朝早く車で家を出て、京都の嵐山から周山街道を約一時間半位走って、やっと美山町に着いた。家から五〜六時間の距離である。ここの茅葺きは家が皆小さくて、やや期待はずれの感があったが、それでもフィルム三本位を撮った。余り長居も出来ないので帰り際に柿の木が眼に止まった。カメラの中のフィルムが4枚程残っていたので、秋の山を背景に全部撮ったが、ここの茅葺きの一軒でもあったらなァーと口惜しい気持ちで撮った一枚で、私にとっては思い出の写真となった。