老人性痴呆について

 講師:安達一眞( 平成12年11月6日講演)


[A]痴呆の定義

  • 1)脳の器質的障害が基礎に認められる。
  • 2)全般的な知能低下が認められる。
  • 3)意識が正常の状態で,知的低下と日常生活の障害が認められる。

「物忘れ(健忘)」(忘れっぽくなっていても,判断力はしっかりしていて,日常生活に支障を来さない)は,生理的なもので老人痴呆では無い!

[B]痴呆の頻度

  • 統計に依って差異が有る。
  • 65歳以上の人口に対する在宅の痴呆性老人の有病率は4.6%
  • 65-69歳  1.2%  70-74歳  7%
  • 75-79歳  4.9%  80-84歳 11.7%
  • 85歳以上 19.9%

病院や施設に入院、入所している痴呆老人も含めると,65歳以上の有病率は約6%と推定。

[C]痴呆疾患の種類

  • 1)変性疾患

    老年痴呆(アルツハイマー型老年痴呆)等

  • 2)脳血管障害

    脳出血,脳梗塞

  • 3)感染性疾患

    脳炎(日本脳炎など),髄膜炎,AIDS等

  • 4)中毒性疾患

    各種薬物(アルコールなど),金属(砒素,水銀,鉛など),有機化合物,一酸化炭素

  • 5)腫瘍性疾患

    脳腫瘍

  • 6)内分泌,代謝疾患

    甲状腺機能低下症,ビタミンB12欠乏症等

  • 7)外傷性疾患

    頭部外傷後遺症,慢性硬膜下血腫

  • 8)その他

[D]痴呆の随伴症状

(ア)随伴症状の原因
  • 1)脳の病的変化が原因のもの
  • 2)心因性のもの

    家族,家庭,仕事,役割,生き甲斐,生活史の記憶の喪失など

  • 3)環境因性のもの

    処遇などによる,孤独,叱責,冷遇,無視など

(イ)随伴症状(随伴情動症状)の実際
  • 1)行動異常
  • 2)精神症状
  • 3)神経症状

[E]痴呆の予防

  • 1)脳血管障害の予防
  • 2)頭を使う。(創造的に,建設的に,趣味的に)
  • 3)頭部外傷を防ぐ
  • 4)寝たきり老人にならないように。(栄養と運動。・・・腹八分目,肥満の予防)