増えてきた糖尿病について ―生活習慣病の予防と食事―

 講師:山中寛紀( 平成12年8月2日講演)


平成8年12月に公衆衛生審議会が「生活習慣病」と言う用語を提言して以来,これまで慣れ親しんだ成人病と言う語を使う機会はすっかり減った。また,最近のわが国における死亡統計では,その第一位は依然悪性新生物であるものの,第二位と第三位の脳血管死と心臓疾患死を併せると,その数は第一位のがんによる死亡者数を上回る。この脳血管障害と心臓疾患に深く関わるのが,動脈硬化でありまたその原因疾患として重要なものが,高血圧症と高脂血症および糖尿病であることは周知の事実である。

このうち糖尿病の罹患者数はここ数年急速に増えており,平成8年度の年令調整による統計からは,糖尿病を強く疑われるもの(HBA1c:6.1以上)は690万人,糖尿病を否定しえないもの(HBA1c:5.6以上)を併せるとじつに1370万人に達するという結果がでている。

そこで今回は,本邦でそのほとんどを占めている2型糖尿病について講演した。

まず糖尿病とは如何なる疾患なのかを簡単に述べるとともに,昨年(平成11年5月)日本糖尿病学会が新しい診断基準を発表したので,この診断基準の概略を示した。

次に糖尿病患者の人口やなぜ糖尿病がそれ程問題になっているのか。すなわち,この病気が恐れられるのはその合併症によるものであることを述べた。

そして,最後に糖尿病にならないよう普段の生活において注意すること-日常の食生活と運動について説明した。とくに,食生活について注意を促すために,簡単なアンケート用紙を添付し,各自に食生活を振り返っていただく材料とした。〈当日使用したプリントを添付します〉

  1. 糖尿病とはどんな病気?

    膵臓から出るインスリンという血液中の糖分が必要以上に増加するのを抑えるホルモンの分泌が悪くなったり,インスリンが分泌されてもその働きが充分行き渡らなくなる病気です。したがって,糖尿病になると血液中の糖分(血糖値)は正常以上に増加します。

    *よく見られる初期症状

    • (1) 疲れやすい
    • (2) のどが渇きやすい
    • (3) 目が疲れる・目がかすむ
    • (4) 尿が近くなる
    • (5) 皮膚にボロが出来やすくなったり,化膿しやすくなる
  2. 糖尿病の人はどのくらいいる?

    平成8年頃にはわが国で糖尿病と糖尿病予備軍(境界型の人)をあわせて約600万人いると言われていました。しかし,ここ数年糖尿病人口は急速に増加しており,昨年度には糖尿病及び予備軍をあわせると既に1000万人を超えているといわれております。

    とくに50才以上の男性では約6人にひとりの割合で軽症も含め糖尿病と言われる位,現在では多い病気です。

  3. 糖尿病はなぜ怖いのか?

    糖尿病になったからといってすぐに死に至る訳ではありません。しかし,放置し不摂生が続くと,その合併症により命をおとすことがあります。血液中の糖分が異常に増加する病気ですが,糖が増加すると血管は大変もろくなります。

    よって,脳卒中や心筋梗塞・狭心症といった脳や心臓の血管障害を起しやすくなります。また,細い血管の障害から手や足の指先に壊疽(腐ってしまうこと)を来したり,眼底出血あるいは網膜症により失明することもあります。さらに腎臓の血管が障害されて腎不全となり,透析治療が必要になることもあります。神経が障害されると,とくに下肢・足のシビレがひどくなります。

  4. 糖尿病はどう診断するのか?

    健康審査で尿に糖がおりたら(尿糖陽性)糖尿病が疑われます。〈尿糖陽性ならかならず糖尿病とは限りません!〉

    血液中の糖分=血糖値がある一定以上に高い時に診断されます。

    -平成11年5月に日本糖尿病学会による新しい診断基準が発表されました-

    空腹時の血糖値が126mg/dl以上の時,あるいは食後血糖が200mg/dlの時は糖尿病型と言います。上記のいずれかが,日を変えて調べた時再度みられたら,糖尿病と診断します。

  5. 糖尿病と食事について

    どか食いは厳禁です!…一度に沢山食べると血糖が一気に急上昇します。

    ながら食いは要注意!…テレビや新聞をみながら食べるとつい食べ過ぎてしまう。

    夕食時間は遅くならぬこと…夕食が遅くなると食べた栄養をエネルギーとして消費せず体にため込みます。

    間食は出来るだけしない

    甘味依存からは脱出する…普段から菓子類など甘いものを食べていると,依存性が生じて甘いものを食べないと気が済まなくなる。

    一日にとるカロリーは必要最小限にする。

  6. 適度の運動も必要です!