視力の異常—近視・遠視・乱視・老視とはどんな目か—

 講師:大野孝子( 平成11年12月21日講演)


目の屈折異常—近視・遠視・乱視—

  • 屈折力と眼軸の長さがつり合っていて,遠くのものがちょうど眼底の網膜上に結ばれて,はっきり見える状態を正視といいます。
  • 網膜より前方に遠くの物体の像が結ばれ,はっきり見えない状態を近視といいます。
  • 網膜より後方に遠くの物体の像が結ばれ,はっきり見えない状態を遠視といいます。
  • そしてどこにも像が結ばれない状態を乱視といいます。

近視,遠視,乱視,いずれも屈折異常によるものですが,一般に目の成長にともない遠視⇒正規⇒近視の傾向を示します。

近視は,水晶体で光が曲がりすぎて,遠くのものの像が,網膜より前で結んでしまう屈折性近視と,眼軸が長すぎて,遠くの像が,網膜より前で結んでしまう軸性近視,に分類されます。

なぜ近視になるのか?

近視になる原因には,遺伝と環境が相互に作用しあって起こります。その本質的な原因については十分に解っていません。

読書やTVゲームなど環境による場合が往々にしてあることも指摘されています。近くを長く見つめて,毛様体筋の緊張が高まった状態を続けると,水晶体がふくらみ,近視になりやすいといわれています。

たとえば,

  1. 目に近づけて本を読む
  2. 近くでテレビを見る
  3. ファミコン(コンピューターゲーム)に熱中する

このように近くを長く見つめている状態を続けると,近視になりやすい傾向があるようです。

近視の矯正

近視になると,その治療方法,つまり矯正には通常,眼鏡やコンタクトレンズの凹レンズを使用します。

眼鏡を掛ける時期と子供の近視眼の矯正

眼鏡を掛ける時期ですが,病的な近視を除いて小学校高学年以上では,教室で黒板の字が見にくくなった時に眼鏡を掛けるようにすればいいでしょう。低学年では,目が疲れる,厭きやすい,根気がない,などの症状が見られた場合,注意すべきでしょう。

子供の近視の矯正については,大人の矯正と変わりありませんが,注意点があります。子供では目の調節の力が強いために,時々,過度の調節が行われ,遠視や正視でありながら,視力検査において近視といわれることが時によってあり,注意を要します。眼科の専門医で正確に検査してもらうことをお勧めします。

網膜より後方に遠くの物体の像が結ばれ,はっきり見えない状態を遠視といいます。乳幼児は一般に遠視で,成長とともに眼軸が伸びてきますので,子供のときにはある程度までの遠視は普通といえます。その遠視にも,近視と同様に屈折性遠視と軸性遠視があります。軸性遠視は,発育が不十分な目の子供に多く,成長すれば直る場合があります。屈折性遠視には,角膜が病気やケガなどで偏平になり,屈折する力が弱くて起こる場合と,水晶体の屈折率が減少して起こる場合があります。

遠視の矯正

遠視の矯正は,軽度であれば,調節する力をつけることによって良好な視力が得られる場合があります。遠視の程度が強くなると,凸レンズの眼鏡やコンタクトレンズで矯正することになります。

しかし子供の場合は調節麻酔剤を点眼して検査しないと,遠視を正視や近視と間違うことがあります。乱視とは,屈折異常のため目に入った像が一つの点,つまり焦点となって結ばない状態をいいますが,正乱視と不正乱視があります。

  1. 正乱視は角膜や水晶体のカーブが方向によって違うために起こります。主に角膜のひずみが原因ですが,実際には近視や遠視と組み合わさって起こる場合がほとんどです。
  2. 不正乱視は角膜の表面が炎症やケガなどでデコボコになったために,像が正常に焦点を結ばない状態をいいます。

乱視の矯正

正乱視は眼鏡で矯正できます。目のひずみと逆方向にひずませる円柱レンズを掛けてピントを合わせます。円柱レンズにも凸レンズと凹レンズがあります。検査時は,複数のひずみを矯正するためにレンズを何枚か重ね合わせますが,できあがった眼鏡は一枚に仕上げられています。

不正乱視にはコンタクトレンズを使用します。これはデコボコになっている角膜の表面とレンズの間に涙が入って矯正できるからです。コンタクトレンズで矯正できない場合は角膜移植を行います。

老眼(老視)

水晶体は直径9㎜の弾力性のある凸レンズで,細い糸のような毛様小帯が毛様体筋によって引っ張られ,その厚さを調節しています。近くを見る場合,若いときには水晶体は弾力があって,すぐに厚くなり,ピントを合わせますが,水晶体の弾力は年を追うごとに減少し,45歳ぐらいになると水晶体を厚くすることができず,25〜30㎝にピントを合わせるだけの弾力さえなくなってきます。これが老眼(老視)で,老眼鏡を掛けて補う必要があります。

老眼鏡は必要か?

『老眼鏡に頼ると年々,度が進む』また『近視は老眼にならない』という人がいますが,老眼鏡を使う使わないにかかわらず,調節力は着実に衰え,いずれは老眼鏡が必要となってきます。

老眼鏡の度数は,個人の目の状態,年齢,職業などの要素を総合して決められます。だから,店頭や夜店などで容易に買わず,ぜひ専門医に診てもらってください。

それ以上に,単に老眼と思って放っておきますと,緑内障・白内障・糖尿病などの成人病だったりしますので,定期的に診察してください。