かぜの話

 講師:上平知子( 平成11年10月28日講演)


かぜとは

かぜの語源は中国では邪気を含む風の病気のこと。古来その風の通過する部位,すなわち呼吸器系の病気の総称として用いられてきた。医学書には鼻,咽頭,喉頭など上気道の粘膜が,ウイルスや細菌の感染あるいは寒冷刺激やガスなどの物理的・化学的刺激そしてアレルギー因子などによって急性の炎症を起こしたときの症状・疾患を総称したものと記載されている。かぜは感冒,寒冒,急性上気道炎(鼻炎,咽頭炎,扁桃炎,喉頭炎)と呼ばれ,炎症の部位により症状は様々である。かぜ症候群は,のどの痛み,くしゃみ,鼻水,鼻詰まり,せき,たん,声がれがあり,全身症状としての熱,けん怠感,頭痛,関節や筋肉の痛み,消化器症状なども伴うことがある。


かぜの予防

1)感染源よりの回避

風邪のほとんどはウイルス感染であり,その予防でもっとも大切なことは感染源よりの回避である。まず感染者との接触を避けること,飛沫感染を受けないことが重要である。かぜのウイルスはくしゃみで5m,せきで3m,会話でも1mは飛ぶといわれる。普通の家庭生活では家族からの感染を避けることはなかなか難しい。流行期にはできる限り人ごみには近づかない方が安全である。

2)マスク

マスクについては日本人は過信の傾向がある。実際普通のガーゼマスクは20枚重ねてもウイルスは通過してしまうので予防効果はない。それでも加湿・保温の効果はあるので全く意味がないというわけではないが,マスクをしたから大丈夫と思ってはいけない。完ぺきに感染をシャットアウトできるような目の細かいマスクもつくられてはいるが,とても苦しくて普段使用できるものではない。

3)うがいと手洗い

うがいと手洗いは大変重要である。外出後にのどや手に付いたウイルスをよく洗い流すことは理にかなっており感染を予防できる。簡単なことながらなかなか励行できないがこれをまめにしている人は確かにかぜをひきにくい印象がある。

4)保温と保湿

かぜ症状をおこすウイルスは200種類以上もあるといわれるがその多くは低温かつ乾燥した環境で増殖しやすい。これが冬にかぜが流行る理由である。したがって体とその周りを暖かくしかも適度に湿気があるように保つことが予防につながる。ウイルスが湿度50%以上になると急速に不活化して,90%以上が一時間以内に不活化したという実験成績もある。室内は温度25℃,湿度60%ぐらいに調節するのが理想的である。

エアコンは乾燥しやすいので加湿器を使用したい。身体をひやさないように衣類や寝具を調節し暖かい食べ物を摂取する。入浴後は湯冷めをしないようにする。昔から推奨されている民間療法の卵酒や,ショウガ湯は身体を暖める効果をねらったものである。

5)その他

一般に栄養状態が悪く,過労や睡眠不足が重なると抵抗力がなくなりかぜをひきやすくなる。バランスよく栄養価の高い吸収のよいものを食べて,ビタミン類(特にビタミンCが予防効果が高いといわれるがビタミンAとBもよい)もとるように努める。休養と睡眠は十分とれる環境作りを心がける。

かぜの中でもっとも重症のインフルエンザにたいしては予防接種が可能であり,その効果は大なり小なり認められている。最近は高齢者や集団感染の機会が多い小児では特に接種を受ける人がふえている。ただし免疫ができるまでに数週間を要するので晩秋ぐらいに注射を受けておくとおそらく流行期を乗りきることができる。