生活習慣病の動向について

 講師:鈴木哲朗( 平成11年10月14日講演)


生活習慣病とは

以前から,脳卒中,がん,心臓病などは「成人病」と呼ばれていましたが,近年,成人病の発症には生活習慣が深く関与していることが明らかになってきています。生活習慣を改善することにより,疾病の発症・進行が予防できるという認識を国民に普及させ,行動に結び付けていくために,生活習慣に着目した「生活習慣病」という概念の導入が平成8年の公衆衛生審議会において提言されました。

「生活習慣病」とは「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症,進行に関与する疾患群」と定義づけられています。


主要死因別にみた死亡率の年次推移

昭和26年に脳卒中が結核にかわって死亡の第1位に,昭和28年にがんが第2位に,昭和33年に心臓病が第3位となり,20数年間この状況が続いていました。しかし昭和56年には,脳卒中にかわって,がんによる死亡率が第1位になり,また昭和60年には心臓病が脳卒中を抜いて第2位になりました。

平成7年において3大死因(がん,脳卒中,心臓病)の順位は2位が脳卒中,3位が心臓病と入れ変わりました。


年齢階級別主要疾患死亡率(人口10万対)

30~70歳代ではがんが死因のトップを占めていますが,80歳をすぎると脳卒中,心臓病が多くなります。

40~64歳のいわゆる壮年期を迎えた人は,家庭の中でも,社会の中でも大黒柱として重要な位置を占めていることが多く,病気になったり死亡したりするとその影響は非常に大きいものになります。


主な傷病の受療率の年次推移

入院の受療率についてみると昭和40年までは結核が第1位でしたが,41年から平成5年度まで精神障害が第1位を占め,平成5年度では第2位が脳卒中,第3位が損傷及び中毒,第4位ががん,第5位が心臓病の順になっております。

また外来の受療率については,昭和48年から平成5年までは高血圧症が第1位をしめ,平成5年度では損傷及び中毒が第2位,心臓病が第3位,脳卒中が第4位,第5位が肝疾患になっています。


主要疾患の総患者数

平成5年度の主要疾患の総患者数は第1位が高血圧性疾患,第2位が心臓病,第3位が糖尿病,第4位が脳卒中,第5位が胃及び十二指腸潰瘍,第6位が喘息になっています。


一般診療医療費の年次推移

昭和58年度では第1位だった高血圧症が平成6年度では第3位に,58年度では第2位だった脳卒中が平成6年度では第1位に,58年度では第2位だったがんは平成6年度では第2位になっております。