生活習慣病について~とくに食餌・運動療法を中心に~

 講師:山中寛紀( 平成11年7月30日講演)

 

☆生活習慣病とは

食生活,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群

*成人病との違い

厚生省公衆衛生審議会は平成8年(1996年12月18日付け),「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について」という意見具申を行い,従来から用いられてきた「成人病」に代えて,新たに「生活習慣病」の概念を導入した。

〈生活習慣病のいろいろ〉
食生活:
糖尿病(2型:インスリン非依存型),高脂血症〈家族性は除く〉,肥満,高尿酸血症,循環器疾患 〈狭心症・心筋梗塞など〉,大腸癌,歯周病など
運動習慣:
糖尿病(2型:インスリン非依存型),高血圧症,高脂血症〈家族性は除く〉,肥満など
喫煙:
肺扁平上皮癌,慢性気管支炎,循環器疾患〈狭心症,心筋梗塞など〉,肺気腫など
飲酒:
アルコール性肝疾患など

☆各代表的疾患の話題

  1. 高血圧症―日本における高血圧症の大部分は原因の特定できないもの,すなわち本態性高血圧である。最近の降圧剤は昔のものに比べ血圧を徐々に下げる。また朝から晩まで24時間の血圧を平均的に下げかつ服用が1日1回のタイプのものが主流。
  2. 高脂血症―わが国では大きく5型に分かれているが,主に総コレステロールのみ高いもの/中性脂肪(トリブリセライド)のみ高いもの/この両者とも高いものがほぼそれぞれ3割づつを占めている。また,循環器疾患と密接に関係す。
  3. 糖尿病―最近日本では糖尿病患者およびその予備群の数が急激に増えている。ごく最近では糖尿病およびその予備群の数は1000万人を越えたと言われている〉――なぜ?……日本人の1日の総摂取カロリーはむしろ減っているが,急速な車社会の到来で,運動不足の人が急増した。
    1999年春の糖尿病の新しい診断基準
      正常域 糖尿病域
    空腹時血糖値 110mg/dl以下 126mg/dl以上
     75g糖負荷試験:2時間値  140mg/dl以下  200mg/dl以上
     75g糖負荷試験の判定  両者を満たすのを正常型 
      何方か満たすもの糖尿病型
      正常型にも糖尿病型にも属さないもの境界型とす

    ★上記表の糖尿病型が日を変えて別の日にもう一度でれば糖尿病の確定診断となる。

    *HbA1c…過去1~2ヶ月におけるその人の毎日毎日の平均的血糖値のため測定に際しては,食事摂取の有無に影響されない。

  4. 肥 満―内臓脂肪型肥満の方が問題である。

    BMI:肥満の程度を示すもので、体重(kg)÷身長(m)2 で計算される。

☆多重危険因子症候群の考え方……インスリン抵抗症候群について

運動療法の利点
  • 1.食後の過インスリン血症の改善
  • 2.肥満の予防
  • 3.高血圧,高脂血症,糖尿病の予防

     〈インスリン感受性の改善〉

     絶食はなぜいけない―インスリン感受性はむしろ低下してしまう!

     インスリン感受性を高めるには食餌療法のみでなく,運動療法の併用が必要。

☆運動療法の行い方

  • (1) 自分に無理なことはしない
  • (2) 変化をつけて飽きないようにする
  • (3) 短時間集中型(ハード)でなく,やや時間をかけて軽めに(マイルドタイプ)行う
  • (4) 週1回のみの運動は効果が期待できない
  • (5) 足が悪くても行える!
糖尿病と運動療法
■運動することで糖尿病が良くなるのですか。

食事に気をつけながら運動すれば病態は改善します。ただし,食事とは逆に運動は,ともすれば「こんなにやった」と多めに見積もりがちです。漠然と行うのではなく,具体的な数字を目標に掲げて運動することが大切です。

■運動をさぼると糖尿病は悪化しますか。

食事に注意し,きちんと運動を続けなければ,病状が悪化する危険性は大きいと言えます。飽きがこないよう多種目の運動を組み合わせるなど工夫しながら運動を続けることが大切です。

監修:久保 明

 (高輪メディカルクリニック院長)

☆食餌療法のポイント

  • (1) 無理なダイエットはしない
  • (2) 食事のバランスを考える
  • (3) 夜遅く食べるのを避ける
  • (4) とくに脂肪の摂取を控えたい

☆生活習慣病対策に関わる検討課題

  • (1) 一次予防の推進
  • (2) 効果的な二次予防対策の実施
  • (3) 患者のQOLの向上を目指した医療技術の開発など