講師:纐纈直樹( 平成13年2月27日講演)
1.基礎疾患
- 高血圧
- 心筋梗塞
- 糖尿病
- 高脂血症
- 頸動脈狭窄
2.生活習慣
- 喫煙
- 飲酒
- 運動不足
- 食生活
- ストレス
アメリカ脳卒中学会(NSA)からの合意声明(2000年1月)
脳卒中の起こり方
脳血栓 | 脳塞栓 | 脳出血 | くも膜下出血 | |
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おこしやすい時期 | 夜間,休息時 | 活動時 | 活動時 | 就寝中は少ない |
頭痛の有無 | ないことが多い | ないことが多い | あることが多い | 激烈な痛みが続く |
吐き気,嘔吐 | 少ない | 少ない | よくある | よくある |
意識障害 | ないことが多い | 時に一過性 | だんだん悪化 | 時に一過性 |
しびれ,麻痺,失語 | 最初からありだんだん悪化 | はじめからある | はじめからある | ないことが多い |
おこり方 | 急激のことも徐々に悪化することもあり | 急激 | 急激におこり短時間 | 急激 |
脳卒中の検査
- CTスキャン
- MRI
- MRA
- 3DCT
- 脳血管撮影(カテーテル検査)
- 脳血流SPECT
検査時間が短い,出血がわかる
脳の細部がわかるが検査時間が長い
大まかな血管病変が見つかる
様々な角度から血管などの情報が得られる
最も多く血管情報がえられるが,入院が必要
脳血流の分布がわかる
脳卒中の検査と治療のながれ
脳出血の症状
- 日中活動時に起こりやすい
- 症状は突然おこり,急速に進展する
- 頭痛,吐き気を伴う
- 著しい高血圧
- 意識障害がだんだん進行
(仕事,外出,食事,用便,入浴など)
脳出血の治療
- 保存的治療
- 手術療法
血腫が小さい場合または巨大な場合
安静,止血剤,血圧管理
脳浮腫を抑える薬
1) 開頭血腫除去術(顕微鏡下)
2) CTガイド下定位脳手術
脳梗塞の治療
症状が軽くても入院(どんどん悪化することもある)
- 保存的治療
- 手術療法
安静
血流改善剤
抗血小板剤,抗凝固剤
1) 頸動脈内膜剥離術
2) 頭蓋内外バイパス術
3) 血管内手術(血管形成術)
くも膜下出血の症状
- 突然の激しい頭痛,嘔吐
- 意識障害(一過性のこともある)
- 頭部が固くなる
- 著しい高血圧
(今まで経験したことのないような)
(バットで殴られたような)
くも膜下出血の治療
- 保存的治療
- 手術療法
- 開頭術(顕微鏡下)
- 血管内手術
クリッピング(脳動脈瘤の根元にクリップをかける)
ラッピング(脳動脈瘤を綿で包んで固める)
足の付け根から細い管を血管内に通し,動脈瘤内にコイルを詰めて閉塞させる
脳動脈瘤が見つからない場合
高齢や全身状態不良
脳卒中から身を守るには
- 普段から健康に気をつける(喫煙,適度な運動,肥満防止)
- 適正な血圧管理
- 健康指導,全身の健康管理をしてくれるホームドクターを作る
- 脳卒中の症状の特徴を知る
- 脳卒中が疑われたら,直ちに専門医のいる病院へ搬送
脳卒中は、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞などに分類される急性の脳血管障害のことです。前触れもなくある日突然半身麻痺や言語障害となることが多く、死亡率も癌、心疾患についで第3です。神経細胞が再生しないため、脳は一度高度な傷害を受けると後遺症が残り、これが脳卒中の治療を難しくしています。
脳出血の治療は保存的に行うことが多いですが、緊急開頭術やCTガイド下血腫吸引除去術が行われることがしばしばあります。脳梗塞もほとんど保存的治療ですが、時に予防的に頚動脈内膜剥離術や頭蓋内外バイパス術が行われ、超急性期に血管内血栓溶解療法を行うこともあります。くも膜下出血は、急性期の状態がよければ、クリッピングという開頭術で再出血を抑えることができますが、最近は血管内手術でマイクロコイルを動脈瘤内に詰めて治療することもあります。いずれの疾患でも片麻痺や失語症などの症状がある場合はリハビリテーションが必要となります。
脳卒中は前触れがないことが多いので、予防と早期治療がポイントとなります。脳卒中のリスクファクターとしては基礎疾患として最も関連の深い高血圧症のほかに、糖尿病、高脂血症、心房細動、生活習慣として喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどがあります。
脳卒中から身を守るには、血圧のコントロールやバランスのとれた食生活、適度な運動などの普段からの健康管理と、最新の医療機器による早期発見、そして症状が出たら出来るだけ早く治療に移る初期治療が重要だと考えます。そのためには、脳卒中の特徴的な症状を知り、脳卒中が疑われたら、直ちに脳神経外科や神経内科のある病院を受診していただくことはもちろんのこと、普段からホームドクターによる血圧管理や健康指導を受けていただくことが大切だと思われます。