講師:茂木仁志( 平成12年8月22日講演)
要約
1.肺のしくみと働きについて
2.主な慢性呼吸器疾患について
- 肺気腫
- 慢性気管支炎
- びまん性汎細気管支炎
- 気管支喘息
- 肺線維症(間質性肺炎)
- 気管支拡張症
- 肺結核後遺症
3.おもな治療薬
- 気管支拡張剤
- 抗炎症剤
- 去痰剤
- 抗生物質
4.呼吸リハビリテーションの種類と適応
- エロゾル吸入
- 腹式呼吸と口すぼめ呼吸
- 体位ドレナージ(排痰)
- 運動療法
- 在宅酸素療法
5.日常生活の注意点
- 生活習慣
- 禁煙
- 運動
- 睡眠
- 生活環境
- 掃除
- 温度・湿度
- 食生活と体重
- やせ過ぎ,肥満
- 食べ過ぎ,塩分とり過ぎ
- かぜの予防
6.こんな症状がでたら、すぐかかりつけの医師に連絡
- 熱
- 息苦しさ
- 咳,痰が増える
- 動悸
- 胸痛
- 体重増加
- むくみ
- 唇,爪が紫色
まとめ
咳,痰,息苦しさなどが,何ヶ月あるいは何年も慢性的に続く場合,慢性の呼吸器疾患が疑われます。初めは症状が軽いため,病気の自覚がないこともしばしばありますが,医療機関を受診するころには既に進行した喘息や肺気腫であることもよくあります。
労作性の息切れが主訴となるものには,慢性閉塞性疾患と総称される肺気腫,慢性気管支炎があります。また気管支喘息では,夜中から明け方の咳,呼吸困難が初発症状になることがしばしばあります。これらは肺機能検査で閉塞性パターンを示す代表的な疾患です。一方,肺機能検査が拘束性パターンを示す代表疾患として肺線維症,肺結核後遺症などがあります。
慢性の肺の病気はいずれも慢性進行性に経過しますが,急性の増悪をコントロールすることが治療のポイントになります。喫煙は最大の増悪因子の1つなので禁煙は非常に有効な手段です。もう1つ大きな増悪因子としてウイルスや細菌などの感染による気道の炎症があります。広い意味で炎症を抑えることが治療の中心になります。
呼吸リハビリテーションは,残された呼吸機能を有効かつ最大限に活用して,症状を改善し,日常生活の範囲を広げるための大切な治療法あるいは訓練です。腹式呼吸,運動療法は特に簡単で有効な方法です。また,病気が進行して呼吸機能の悪化による慢性の低酸素血症を呈する場合は,在宅酸素療法を開始することにより日常生活の範囲と質を向上させることが可能です。