大腸の検査

 講師:加藤丈博( 平成12年7月25日講演)


日本人の食生活が変わって,食物が欧米化してきたためか,大腸癌が最近急速にふえてきた。

大腸癌による死亡者数は,この30年間で5倍以上になった。

大腸癌の症状

  1. 無症状
  2. 血便,粘液便,粘血便
  3. 便通異常,便秘と下痢,便が細い
  4. 残便感
  5. 腹痛,腰痛,肛門痛
  6. 腹部膨満感,吐き気,嘔吐
  7. 体重減少
  8. 貧血
  9. 腫瘤
  10. 肝臓の腫れ

大腸癌の発生位置と発生率

  • 盲腸   10%
  • 上行結腸 5%
  • 横行結腸 10%
  • 下行結腸 5%
  • S行結腸 30%
  • 直腸   40%

大腸癌の検査

  1. 便の潜血反応
  2. 直腸指診
  3. 肛門鏡,直腸鏡
  4. 注腸造影
  5. 大腸内視鏡
  6. 腫瘍マーカー CEA(癌胎児性抗原)

肛門,直腸,大腸の主な病気

  1. 痔核
  2. 大腸ポリープ
    • 過形成性ポリープ
    • 大腸腺腫
    • 大腸癌
  3. 大腸癌
  4. 潰瘍性大腸炎
  5. 虚血性腸炎
  6. 大腸憩室
  7. 過敏性腸症

大腸癌の主な治療

  1. 内視鏡的ポリープ切除,内視鏡的粘膜切除
  2. 手術

便潜血反応が1回でも陽性となった人,何らかの便通異常,腹部症状がある人,貧血がある人は,積極的に大腸精密検査を受けたほうがよいと思われる。

日本人の食生活が変わって,食物が欧米化してきたためか,大腸癌が最近急速にふえてきました。大腸癌による死亡者数は,この30年間で5倍以上になりました。

わが国では,中高年者の胃の集団検診が,勤務先や地域でさかんに行われるようになり,また,胃のレントゲン検査が比較的受けやすいこともあって,早期の胃癌がよくみつかるようになりました。

では,大腸癌の検査はどうでしょうか。大腸をみる検査は,注腸造影と大腸内視鏡がありますが,いずれも下剤をかけて腸管をからにしなければならないので,胃レントゲンのように一度に多数の人はできません。そのため,まず便潜血液検査を行い,陽性の人には大腸精密検査を行います。大腸癌は,常時出血しているわけではありませんので,一度でも陽性がでれば精密検査を受けることが大切です。また,進行癌であっても便潜血反応陰性の場合もありますので便通異常,お腹の症状のある場合は精密検査を受けた方がよいと思われます。

大腸癌は比較的予後もよく,治りやすい癌です。早期にみつかれば,内視鏡的に切除できるものもあります。また開腹手術を行っても根治できる可能性が高くなります。とにかく重要なのは無症状の早い時期にみつけることです。

大腸癌は,色々な症状を起こしますが,かなり進行しないと症状として現れません。

手遅れにならないためにも,便潜血陽性の方,血便,便通異常などお腹の症状のある方は,積極的に大腸精密検査を受けたほうがよいと思われます。