更年期を明るく楽しく過ごすために

 講師:岡村尚子( 平成12年1月25日講演)


更年期とは?

更年期とは閉経を中心にその前後を合わせた時期で,一般的には45歳から55歳頃を言います。

エストロゲンと閉経の関係

更年期には卵巣の機能がおとろえ,女性らしさを保ち,臓器保護の役割を担っていたエストロゲンの量が徐々に低下します。そして閉経を迎えます。

エストロゲンの分泌の変動と体に現れる症状

エストロゲンの低下に伴って,早期に現れる更年期障害(のぼせ,ほてり,発汗,不眠など)遅い時期に現れる症状(骨粗鬆症,動脈硬化症,心臓病,萎縮性膣炎,アルツハイマー病など)があります。

更年期—がまんしていれば通過できる?

ホルモン補充療法(HRT)は,更年期以降に急激に減少するエストロゲンを薬で補う事により更年期以降の障害の治療や予防をする方法です。また,日常生活に差し支えるような更年期障害に対する治療の一つでもあります。

早い時期に現れる“不快な症状”

のぼせ,ほてり

早い時期に現れる症状

不眠・うつ・物忘れ

女性に多いアルツハイマー病

エストロゲンによりアルツハイマー病の症状が改善された報告もあります。

老化するとどんな変化があるのでしょう

眼,脳,血管,皮膚,骨など身体の各部に変化が訪れます。

老年期に現れる皮膚症状

張りがなくなる,しわ,たるみ,乾燥感

更年期に起こる症状

性交障害・尿失禁

更年期,老年期には検査をして始めてわかる疾患があります

骨粗鬆症,高コレステロール血症

骨粗鬆症とエストロゲン

閉経後,骨量は急激に減少します。エストロゲン投与により,骨量の改善,骨折の予防が可能です。

更年期以降に増える病気“高コレステロール血症”

閉経後,エストロゲンの低下と,加齢により高コレステロール患者の頻度が上昇します。また,日本の平均血清コレステロール値は,年々増加しています。

心血管疾患の危険因子

高血圧,閉経後の女性,高脂血症,喫煙,肥満,糖尿病

心血管疾患に注意!

狭心症,心筋梗塞は大丈夫ですか?

動悸,胸の圧迫感,不整脈,高コレステロール血症はありませんか?

心血管疾患を予防するために

アメリカではエストロゲンによる心血管疾患の予防が行われています。

更年期障害の原因

実際には,エストロゲンの急激な減少だけでなく,対人関係を中心にしたストレス(子どもの独立,夫の転勤や定年,親の介護,仕事のストレスなど),性格的なものの影響も加わってより複雑な症状を呈します。

更年期障害の治療

  1. 病院でのカウンセリング
  2. ホルモン補充療法(HRT)だけでなく,症状に応じて,精神安定剤や抗うつ剤,自律神経用剤,漢方薬を処方します。

  3. スポーツ
  4. ウォーキングでコレステロール値の上昇や骨粗鬆症の予防をしましょう。

  5. ストレス解消
  6. 自分だけで我慢しないこと,一人で背負い込まないこと,仲間を作ること,息抜きに趣味など楽しみをもつこと…などです。

更年期にとりたい栄養素

  1. 塩分をとりすぎない
  2. 脂肪を抑える
  3. 良質なタンパク質をとる(肉より魚,動物性と植物性は1:1)
  4. カルシウムをたくさんとる
  5. 食物繊維をたくさんとる
  6. ビタミンを多くとる
  7. 三度の食事は規則正しく,きちんと
  8. 間食は控える
  9. よくかんでゆっくり,腹八分目を心がける
  10. バランスよくたべる(一日30品目が目標)

ホルモン補充療法を受ける時に気をつけること

まず,卵巣の機能が低下していなくてエストロゲンが正常に保たれている人にはホルモン補充療法は無意味です。また乳癌,子宮癌を経験した人,肝機能異常のある人,血栓症の既往のある人は受けることが出来ません。

ホルモン補充療法を行う場合,病院で定期検診を受け,症状の改善効果,副作用の有無などを確認します。乳癌,子宮癌など癌検診と,採血,血圧測定,検尿等で成人病を早期発見も必要となります。

副作用

子宮体癌,乳癌について