虚血性心疾患とその予防

 講師:平岩堅太郎( 平成11年11月11日講演)


〈虚血性心疾患とは〉

狭心症は心臓自体に血液を供給している冠状動脈に動脈硬化ができて内腔が狭くなり,その結果血流量が減少し,心筋が酸素不足に陥って起こる病気です。冠動脈硬化が進行して内腔を閉塞すると血流は途絶し,末梢の心筋は壊死に陥ります。これが心筋梗塞です。この様に狭心症と心筋梗塞は同じ原因で起こる類縁疾患であることから一括して虚血性心疾患と呼ばれています。

〈狭心症・心筋梗塞の症状と治療〉

狭心症は典型例では労作時に前胸部がしめつけられたり圧迫される感じが数分間持続し,安静で軽快します。左肩や背部に放散したり,左腕がだるくなったりすることもあります。なお冠状動脈のレン縮(ケイレン)が原因の異型狭心症は夜間,早朝の安静時に狭心症状を認めます。心筋梗塞は典型例では冷汗を伴う激しい胸痛が1時間以上持続し,狭心症の時有効だったニトログリセリンは効きません。呼吸困難や不整脈やショック症状を呈することも有ります。

狭心症は冠動脈造影を行って内科的治療にするか外科的治療にするかを決定します。心筋梗塞はCCUと呼ばれる集中治療室で最良の治療を行います。退院時にはやはり冠動脈造影を行って今後の治療方針を決定します。

〈狭心症・心筋梗塞の予後と将来〉

狭心症は,それ自体で死亡することは少ないのですが,冠動脈硬化が進行すれば不安定型狭心症の状態を経て心筋梗塞へ移行します。心筋梗塞は死亡率が約15%の恐ろしい疾患で,発作が2回・3回と起これば生存は危くなるでしょう。

現在では,虚血性心疾患の予後は冠動脈造影によって予知が可能となりました。一枝病変,二枝病変,三枝病変の順に予後が悪くなります。三枝病変でも外科的適応があればA-Cバイパス手術を受けた方が生活もエンジョイでき,しかも予後は良好です。

しかし,A-Cバイパス手術の適応にもならない,放っておけば確実に死ぬ収縮の悪い心臓病患者に救いは無いのでしょうか?これを救う方法は心臓移植しかありません。欧米では年間2,000例以上の移植がなされており,生存率もサイクロスポリンAの導入により著明な改善が見られております。日本でも1例目から30年へた1999年2月,ようやく2例目の移植術がなされました。

〈予 防〉

一次予防:虚血性心疾患にならない為,排除できるリスクファクターを遠ざけるような生活習慣に改め,適度な運動をします。また原疾患があれば治療に専念します。

二次予防:心事故再発防止の為,更に厳格な原疾患の治療を行います。特にコレステロール,LDL-コレステロールは,高脂血症治療薬を用いて更に低くする必要が有ります。

またβブロッカー,ACE阻害剤,ある種のCa拮抗剤は生存率向上に有効な為,服用する必要があります。

以上を新しい試みとして液晶プロジェクターを用いて説明した。